
岡田裕子 井戸端で、その女たちは(岸本清子と林三從、山崎つる子) 2025
カスヤの森現代美術館は、神奈川県横須賀市の閑静な住宅街に佇む小さな私立美術館だ。ここでは夫婦でもあり、ともにアーティストでもある会田誠と岡田裕子による「2人展 会田誠・岡田裕子」が、8月16日まで開催されている。

岡田が本展に持ち込んだのは、昨年の「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」で発表された《井戸端で、その女たちは》というシリーズ作品だ。「物故女性アーティスト」をテーマに据えたこのシリーズから、今回は前衛の時代を生きた女性たちが選ばれた。

暗い展示室には井戸が出現する。かたわらにテーブルと椅子が並び、岸本清子、林三從、山崎つる子の対話が聞こえてくる。彼女たちの声はすべて岡田自身が演じている。鑑賞者は、彼女たちが座っているであろう椅子に腰を下ろし、その会話に耳を傾けることができる。「井戸端会議」という言葉には、女性の日常的なおしゃべりを軽く見る眼差しが歴史的に埋め込まれてきたが、岡田は私たちに問いかける。彼女たちの会話は本当に「他愛もない」ものだったのか。


屋外に広がる大きな庭には、枯れた古い井戸がある。散策しながら見つけたその場所に、大橋エレナと白髪富士子のふたりを据えたもうひとつのインスタレーションが設置されている。現地でQRコードをスキャンすることで、インスタレーション風景とともに音声作品を体験できる。このふたりには「パートナーもアーティストである」という共通点があり、同じ立場に立つ岡田自身の共感も作品に滲んでいる。

会場にはさらに、岡田が図書館でリサーチを進めるなかで記録したドローイングや、各作家の参考資料、本作品の台本も展示されている。ふたりの著書も購入することができる。

